ソロモン 地球内部への旅 02 

オルフェウス 

 

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 ギリシア・ローマ時代には、エレウシウス密儀、ディオニュソス密儀、ミトラス密儀など、密儀宗教として知られるさまざまな宗教が花開いた。それらの教義や儀礼は秘密で、イニシエーションを受けた者のみがそれらを知ることができた。これらの密儀宗教のなかでも、もっとも固く秘密が守られたのはどれだろうか。それはオルフェウス密儀、つまりオルフェウス教である。

 秘密が堅守されてきたため、オルフェウス教に関するわれわれの知識は限りあるものである。その信者たちが禁欲生活を送り、個人的な救済を求めていたことをわれわれは知っている。また究極のゴールが死後の世界にあることも知っている。オルフェウス教を信奉することによって、かれらは輪廻のサイクルから脱し、神々との共生を達成することを願うのだ。そしてクトーニアン(クトゥルフ神話に登場する種族)、あるいは地底の神々――かれらの故郷はオリンポス山というよりハデス(冥界)である――を信仰することを知っている。

 それに加えてわれわれは宗教の創始者についてある程度の知識を持っている。彼はオルフェウス(オルぺウス)という名の音楽家である。言うまでもなく、ウェルギリウス(農耕詩)やオウィディウス(変身物語)によって語られたオルフェウスのハーデースへの降下は、ギリシア神話のなかでもおなじみの物語である。しかしオルフェウスの生涯についてそれ以外には何も知られていないのだろうか。また彼のハーデースへの降下の物語は事実を反映しているのだろうか。

 (紀元前1世紀の歴史家シケリアのディオドロスによれば)オルフェウスはトラキアに生まれた。父はオイアグロス王である。幼少の頃から彼は音楽と詩の才能を見せていた。彼は竪琴を持って、聖なる事物について歌いながら、トラキアの丘を彷徨した。その音楽は人だけでなく、野獣をも魅了した。(木々も彼の音楽にあわせて揺らいだという) そしてある時期エジプトへ旅をした。そこで彼は音楽の知識を得て、教義の基礎を作ったという。

 音楽家として大いなる名声を得た彼はアルゴナウタイ(アルゴー船探検隊)――黄金の羊毛を探しに航海に出るギリシアの英雄たち――に参加するよう求められた。(この章のソースは『ローデスのアポロ二ウスのアルゴナウティカ』) アルゴー船出発の際には、彼は賛歌をささげた。そしてケレウステスとして水夫たちをメロディアスな声で鼓舞しながら漕ぐテンポを指導した。また彼の歌の魔術はほかにも応用できることが証明された。音楽によって彼は海をなだめることができたのだ。彼は仲たがいをおさめた。「衝突する岩(シュムプレーガデス)」を静かにさせた。セイレーンの歌によって溺れないようにした。そして黄金の羊毛を守る竜を眠らせた。オルフェウスと彼の竪琴によって、アルゴナウタイは探求の旅に成功した。

 

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