(4)

 エウリュディケが召喚された。状況が彼女に説明された。冥府を出ると、彼女はオルフェウスのあとを追い、彼は視線を前方に固定した。

 ふたたびいっしょになったふたりは川に近づいた。カロンはボートの上でうつらうつらしていたので、オルフェウスは大声で呼ばなければならなかった。彼はエウリュディケの姿を見て驚愕した。ハーデースの住人が去る許可を得るなんてめったにないことだった。しかしともかく彼はこのふたりをボートに乗せて対岸へ運んだ。

 このカップルは生者の国へ向かって、縦になって階段を上っていった。かれらの顔は喜びに満ちていた。しかしまだ目を合わす機会はなかった。唇を合わせることもなかった。頭上からわずかな明かりが見えてきた。階段を上がる速度が倍増した。

 オルフェウスは入り口に着き、歩を踏み出した。そして彼は洞窟に戻った。喜び勇んで彼は声を発し、振り向いて愛する人の顔を見てしまった。

 エウリュディケは消え始めた。なぜなら彼女はまだ入り口に到達していなかったのだ。それにオルフェウスは彼女の解放の条件を破っていた。

「さようなら」とエウリュディケは言った。そして嗚咽しながら消えていった。

 オルフェウスは駆け出して、何もない空中をつかんだ。そして何が起きたか理解した。妻をふたたび失い、彼は自分の身体に戻った。洞窟の地面に倒れこんだ彼はいつまでもすすり泣いていた。


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