(5)

 なぜオルフェウスは振り返ってしまったのか、不思議でならない。エウリュディケをもう一度失ってしまうのに、なぜ彼は掟を破ったのか。さまざまな説明が提供されている。

 

1 喜びすぎて彼は課せられた条件のことを忘れてしまった。

2 彼自身が上の世界に到達したため、彼女を見るのは自由だと思い込んだ。

3 彼女が後ろにいないのではないかと、突然疑念に襲われた。 

4 彼女が最後の瞬間にしり込みするのではないか、そして助けを必要とするのではないかと恐れた。

5 本能的な行動を取ってしまった。つい振り返ってしまった。

 

 上記のどれも彼がヘマをしでかしたことを示している。しかしこのヘマは彼らがふたたびいっしょになることを妨げてしまったのだろうか。あるいはふたたびいっしょになるというのはスタートから間違った希望だったのだろうか。

 パイドロスによれば(プラトンの『饗宴』に引用)後者が正しい。パイドロスは、エウリュディケはたんに影――神々が生命を取り戻してほしいと考えない幽霊――に過ぎないと論じる。彼らは彼が勇気を持っていないと非難し、間違った希望をオルフェウスに与えている。彼は愛する人と再会したいと願っているのだろうか。そのためには方法はひとつしかないはずだ。つまり彼女とおなじように死ぬしかないのだ。

 パイドロスが鍵を握っている。というのもエウリュディケは影(亡霊)にすぎないので、彼女はハーデースに戻らなければならないのだ、オルフェウスが振り向こうが振り振り向くまいが。生者の世界での再会はけっしてありえないのだ。

 


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