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 オルフェウスにはまだ何年もの余生があった。この時期に彼はあきらかにハーデースへ下降したことを基礎とした宗教、オルフェウス教を創設している。これはエジプトで会得した知識がもとになっている。彼はまた挽歌を歌いながらトラキアのあたりを彷徨している。

 そしてオルフェウスの死とは?

 2世紀、パウサニアスというギリシア人が執筆予定のガイドブックのためにノートを取りながらそのあたりを旅行した。旅をしながら彼はディウムという町を訪ねた。そこで彼はモニュメントを見せられた。モニュメントというのは、骨壺が載った石柱だった。地元の人の話では骨壺に入っているのはオルフェウスの骨だという。

 音楽家の死に関しては、二通りの説があるとパウサニアスは聞いた。ひとつは、怒った女たちに切り殺されたという説。彼女らの夫たちが妻のもとを去り、彼の宗教に参加したのだという。もうひとつは、彼は雷に打たれて死んだのだという。神々の秘密を漏らしたとして神々から罰を受けたのだという。

 いかなる状況であれ、オルフェウスの死で物語は完結しなかった。オウィディウスは何が起きたかをつぎのように描いている。

 

歌い手の魂は大地の下を疾走した 

そしてここがかつて嘆願した場所であることを想いだした 

いま彼は競ってエリュシオンへまっすぐ向かい 

エウリュディケを見出した 

ふたりは抱擁した 

いま彼らは恋人同士、手と手をつなぎ、歩いていく 

甘い舌の詩人と耐え忍ぶ花嫁 

ときには彼女が前を歩き、ときには彼が先を歩く 

 

 もはや美しいエウリュディケを振り返る必要もないだろう。

 

 


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