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 アポロニオス一行はカフカスを通るルートを取った。つまりプロメテウスがつながれていた山を通過したのである。(地元の人々は彼らに鎖のあとを示した) ある月の輝く夜、彼らはエンプサ、すなわち吸血鬼に襲われた。(アポロニオスは強く叱責しながら追い払った) とはいえ中央アジアを通る旅の大半において、おおむね何も起こらなかった。アポロニオスとダミスは哲学的な論議をして時を過ごした。

 ある日象に乗っている人々を見た。アポロニオスらはインドに到着したのである。インダス川を渡り、彼らはタクシラの首都に達した。そこで三日間、彼らはプラオテス王の賓客となった。

 富を持ちながら、プラオテス王はつつましやかな節度ある生活を送っていた。哲学に身を捧げる者として、彼は名誉を持って哲学者を迎えた。会話をしている間、彼はアポロニオスにたずねた。

「ギリシアでは、あなたがたは私を客として受け入れてくれるでしょうか」

「どういう意味ですか」アポロニオスは言った。

「というのも、あなたは私よりはるかにすぐれているからです。智慧において、王族の者のレベルよりはるか上をいくのです」

 出発の日の朝、プラオテス王はアポロニオスにあらたなガイドをつけた。王は彼に賢者の国の長であるイアルカスへの紹介の書簡を持たせた。書簡はつぎの文章ではじまった。 

 

プラオテス王よりイアルカスおよび仲間の賢者たちにごあいさつ 

とても賢明なる人物、アポロニオスはあなたが彼自身よりも賢明であると考えています。そしてあなたから学ぼうとしています。あなたから知識を得ることができれば、失望することはないでしょう。こうしてあなたの智慧は受け継がれていくのです。アポロニオス以上にうまく話すことができ、よく記憶することができる者はないのですから。

 

 タクシラを出発し、アポロニオスと仲間たちはヒュパシス川を渡った。(川岸に建ったモニュメントはここがアレクサンダー軍がやってきて、引き返した地点であることを示している) 彼らはラクダをつついて沼沢地(ピロストラトスによれば、一角獣がここに棲んでいる) を渡らせ、山(猿たちが胡椒の木の収穫に手慣れている)を越え、豊かな農地(ガンジス川の水を灌漑用水によって引き込んだ)を抜けた。




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