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 いったいどうしてヘルラ王と騎士たちは苦境に陥ることになったのだろうか。これは小人王が得意とするいたずらなのだろうか。

 そしてこのブリトン人たちはどうなったのだろうか。一説には、彼らは馬に乗ったままだという。幽霊騎馬隊となって――犬が地上に降り立つまで――いまだに田舎をさまよっているというのだ。

 夜、耳をすますといい。雷鳴のような音が聞こえるかもしれない。それは騎馬隊の蹄の轟である。

* 地下世界を訪れると、時間のねじれが生じることがある。たとえば妖精の世界に降りていった者は妖精に歓迎され、一年間、ダンスや宴、その他さまざまなことをたっぷりと楽しむことができる。しかしそのあと家に帰ると、たった一時間しかたっていないことを発見する。

 あるいは逆のことが起きる。このタイプの話でもっとも人口に膾炙しているのは、リップ・ヴァン・ウィンクルだ。一晩小人たちと、どんちゃん騒ぎをしたリップは、朝、村に帰ると、すべてが一変していることに気づく。なんと二十年が経過していたのだ。

 そして『名山洞天福地記』(有名な山における洞窟の天国と幸福の地に関する報告)の中で杜光庭(850933)は中国における似たケースを描いている。ある農民は小道をたどっていくうちに山の中に入り、「香のいい花々やみっちりと生える柳、朱色の仏塔、赤い水晶の堂、とてつもなく大きな宮殿」がある奇妙な土地に出たのである。

 そこには彼を誘惑する女たちがいた。女たちは彼を悦楽の家に誘い込み、音楽とワインに耽溺させた。彼はあやうく女たちの甘言にひっかかりそうになったが、そのとき愛する妻と子供たちのことを思い出した。そして逃げ出したのである。踊る光によって彼は道を逆にたどって戻ることができた。

 村に戻ることができたが、彼は村人のだれも見覚えがなかった。家にたどりついたが、そこに住んでいるのは見知らぬ人たちだった。驚いたことに、彼らは彼の子孫だった。彼らが言うには、何百年も前、先祖が山に入ったまま行方不明になり、二度と姿を見せなかったとのことである。



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