地球内部への旅 06 

クー・フーリン 

(1)

 クー・フーリンが目を開けると、そこに女が立っていた。深紅の服を着た彼女は魅惑的な笑みを浮かべていた。有名なアルスターの戦士は期待に胸を膨らませた。

 彼はダン・デルガン要塞の近くの聖なる柱に体をもたせかけて休んでいた。クー・フーリンは酔っぱらって要塞からよたよたと出て、柱の下でどさりと座り込み、そのまま眠ってしまったのである。眠りから覚める直前、深紅の羽毛の鳥が足元にとまるのを彼は一瞬見た。鳥は飛び去ったが、うれしいことに、かわりに魅力的な女が立っていたのである。

 しかし喜びは失望に変わった。というのも女は笑いながら馬の鞭で彼を叩き始めたからである。

 午後、友人の戦士たちに発見されたとき、彼は柱にもたれかかったままだった。奇妙な熱病にさいなまれていたクー・フーリンは、茫然自失の状態で、動くこともしゃべることもできなかった。友人らは彼を要塞に運び、ベッドに寝かせた。

 数週間、彼はこのような状態のままだった。妻のエメルはベッドのわきに坐り、彼に歌いかけた。「さあ起きて、アルスターの英雄よ」彼女は歌う。「戻っておいで、愛する人」。彼女はまた地元のドルイド僧に相談した。しかし彼が呪術と霊薬を駆使してもクー・フーリンを治すことはできなかった。


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