地球内部への旅 07 

エルダー 

 

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 エルダーは12歳の少年だった頃に地底の王国を訪ねたと主張した司祭である。彼の物語は中世の年代記作家、ギラルドゥス・カンブレンシスによって記録された。ギラルドゥスはその物語を聖ダビデ教会の主教から聞いていた。そして主教はエルダー本人から聞いたのだという。

 若きエルダーは聖ダヴィド教会の修道院学校の生徒だった。しかし彼は厳しい学校生活に恨みを持っていた。(ギラルドゥスは『箴言』から引用し、「果実は甘いけれど、学ぶことの根源は苦い」と述べた) それで彼は学ぶことをないがしろにし、教師からたびたび殴られた。ついに彼は本をすべて捨て、逃げた。

 エルダーは二日間、川岸の空洞(うろ)に隠れた。疲れ切り、腹ペコの彼は逃げたことを後悔し始めた。そのとき声が聞こえ、見上げると、二人の小さな男が目の前に立っていた。「ついて来なさい」ひとりが言った。「喜びと遊びの国にきみを連れていってあげよう」。エルダーは同意して、彼らのあとをついて地下へ通じる道を降りていった。

 彼らは地下世界に到着した。「そこはとても美しい国でした」とギラルドゥスは言う。「川や牧場、森、平原がつづいていました」。空は厚い雲が垂れこめて暗かった。薄明がさすと、大地に不気味な呪いがかけられたかのようだった。

 


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