地球内部への旅 09
吟遊詩人トマス
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妖精の女王は若者に魔法をかけるのが好きだった。妖精の国のお城に若者を連れ去り、奴隷にするのである。彼女はハンサムで詩作に秀でる者を好んだ。そんなひとりが吟遊詩人トマスことアーシルドゥーンのトマスだった。
トマスは13世紀のスコットランドの領主だった。彼はエイルドン丘のアーシルドゥーンの塔に住んでいた。彼の人生や家族についてはほとんど知られていない。しかし当時彼は詩人として、また預言者としては知られていた。トリストレム卿というタイトルの韻文の物語――英語の作品としてはもっとも初期のもの――を書いた。予言に関して言えば、それらはいつもその通りになった。そして物語は、彼がどのようにして予言能力を持つようになったかという話から始まる。
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