(2)
物語のはじめ、トマスは川岸でくつろいでいる。若くてハンサムな彼は川面に映る自分の姿を称賛していた。突然蹄の音が聞こえた。森の中から白馬に乗った女が現れ、彼のところにやってくると、止まった。
彼女は緑のシルクのガウンを羽織り、ベルベットのケープをつけていた。彼女は地上のものとは思えないほど美しく、トマスは幻覚を見ているのではないかと思った。「あなたは天国の女王マリアではないでしょうか」と彼はたずねた。女は笑った。「わたしは女王よ」彼女はこたえた。「でも天国の女王ではないわ」。彼女はトマスに自分にキスするようにと言った。
彼女の美しさに気圧されて、彼は女王にキスをした。そして彼の運命は決まった。キスによって彼に魔法がかかったのだ。彼はいまや妖精の女王に夢中だった。彼女は馬に乗り、彼女の後ろにまたがるようにと言った。彼はそのようにした。ふたりはいっしょに馬に乗り、森の中に入っていった。
日暮れ時に彼らは妖精の丘に着いた。女王が両手を打つと、正門が開いた。彼らは丘の中に入り、通路を進んで地中深くまで行った。馬は速足で駆け、ベルがチリンチリンと鳴った。蹄が地面を叩きつける音が壁――それは輝いていた――にこだました。
水がほとばしる音が聞こえてきた。それは次第に大きくなり、彼らは地底の川に到達した。暗い水が地下深くに流れていたのだ。馬は川を渡り、ふたたび駆け出した。
そして光が見えてきた。彼らが通路から飛び出すと、眼前には丘陵の入り混じった広大な平野が広がっていた。灰色の空が垂れ下がっていたが、それは洞窟の屋根のようだった。コウモリがその下を飛び回っていた。
「わたしたちは地下世界にいるのです」と女王は言った。
彼女は地面にケープを広げ、携えてきたワインと食べ物を出して座った。トマスとの食事を楽しもうというのだ。ふと彼女は道路のほうを指さした。それは四つの道に分かれていた。彼女は言った。
「いちばん右の道は、祝福された魂を天国へと導く道。下方への道は、もっともよく通る道ですが、魂を永遠の罰の場所へ導く道。三番目の道は、広がる平原を通り、痛みの柔らかい場所(煉獄)へと導く道。そこから祈りとミサは攻撃する者たちを解き放つ。そして四番目の道を見よ。それは光り輝く城へと導く。この道はわたしたちが向かっているエルフランドへの道。城の主はこの国の王。そしてわたしは王妃」
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