地球内部への旅 13
リューベン
(1)
ラビ・ピンチャス(1728-1790)は(ウクライナの)コルチク川沿いのコレツという町に住んでいた。ハシドであるこのラビはバール・シェム・トヴの弟子だった。
ラビ・ピンチャスは聖人のようでもあり、学者のようでもあった。彼は祈りや瞑想、研究に日々身を捧げた。とりわけ捧げたのがユダヤ人の神秘主義の骨頂であるゾーハルだった。彼は日々その勉強をして、自分の弟子たちにも同様に勉強するよう促した。弟子たちはラビ・ピンチャスを尊敬し、彼が特別なパワーを持っていると信じて疑わなかった。
世俗のことは気にかけず、ラビ・ピンチャスは清貧の生活を送っていた。彼はぼろぼろの家に妻と娘とともに住んでいた。彼の指導や知識、奇跡のおこないを求める人々に対しては、いつも応えてくれた。ある日、リューベンと名乗る若い男が玄関先に現れた。
イェシーバーの学生であるリューベンは連続する夢に促されて、遠い町からコレツにやってきた。これらの夢の中で、亡き父が現れた。父はコレツに行ってラビ・ピンチャスを探すようにと言った。
呼ばれて扉のところまでやってきたラビ・ピンチャスはリューベンを歓迎した。彼は「特別なお客」のために食事を準備するよう妻に命じた。一瞬彼は若い男をじっと見つめた。それから彼は、リューベンはミクワーを訪れるべきだと言った。新しい月の宴がその晩始まろうとしていたのだ。
リューベンは家の後ろに位置するミクワー小屋へ向かった。彼は入口から中に足を踏み入れた。目の前の階段は暗闇の中へ下降していた。リューベンは暗闇に目を凝らしたが、水槽を識別することができなかった。小鳥のさえずりのような音が下から上昇してきた。
彼は階段を降り始めた。奇妙なことに水槽は姿を見せなかった。それどころか階段はさらにずっと下に伸びていた。
さらに降りていくと、彼は暗闇に飲み込まれた。それでもリューベンは小鳥のさえずりに誘われるかのように、あるいは催眠術の力によって押されるかのように、ずっと下降していった。地下深くに下降するに従い、足音が反響するようになった。
ようやく階段の底に到達すると、彼は光の中に立っていた。驚いたことに、彼は地底の森の中にいた。茂る木の葉の中で小鳥たちがさえずっていた。青みがかった光が木々を照らしていた。見るかぎりミクワーの水槽はなかった。
当惑したリューベンは森の中をぶらぶら歩いた。階段へ戻ろうとしたそのとき、近づいてくる声が聞こえた。恐ろしくなった彼は木に登り、葉陰に隠れた。
⇒ つぎ