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 わたしはめくるめくような感覚を覚えている。知らず知らずのうちに自己防衛本能が働いて、がっしりした体をつかもうとわたしは両腕を振り回した。ガイドがしっかりとわたしの腕をつかんだので、自然にその動きは止まった。そうしてしっかり組み合ったわたしたちは7千マイルの真空を落下していった。本能的にわたしは嘆願の祈りの言葉をつぶやいていた。

 

 彼らは光の海に飛び込み、さらに加速した。しかし大気の摩擦が少なかったので、モーガンは自分が動いていないように感じた。彼は奇妙なほど、落ち着きながらも意気軒高だった。「すべてを忘れながらも、わが存在に浸透し、包み込んだ絶対的なやすらぎの楽しい感覚だけは残った」。彼は自分たちがどこに向かっているのかと聞いた。

「地球の真ん中の空間です」とガイドは答えた。垂直に落下しているにもかかわらず、彼は重力の本質についてのレクチャーをつづけた。

 銀色の三日月が見えてきた。彼らがそれに近づくと、崖縁に立つローブを着た人物であることがわかった。モーガンはそれが死すべき存在であるかどうか聞いた。ガイドは答えた。

 

「それは死すべき存在であり、わたしたちが来るのを待っていたメッセンジャーです。あなた個人を担当していて、これからあなたを導いてくれるでしょう。わたしの役目はあなたにおびただしいレッスンを与え、あなたが身を捧げている教条的で物質主義的な地上の哲学を破壊し、克服することです。そして地表での生活がより明るい存在への通過点に過ぎないことを理解してもらうことです」

 

 モーガンはようやく理解できた。「わたしを見捨てないでください」彼は嘆願した。「錬金術的な架空の産物をはるかに超えたこの地底世界へと導いたあとも」

 

 


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