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 その朝、鳩が窓敷居にとまった。くちばしにくわえていたメモには、待ち合わせ場所へ行くようにと書かれていた。バラードがそこへ行くと、サンジェルマンが迎えてくれた。アセンデッド・マスターのかたわらにいたのは豹だった。

 またもバラードは身体から分離したように感じた。身体は地面にバタッと倒れた。サンジェルマンは彼に、豹が身体を守ってくれると確約した。そしていっしょに山の頂上へと飛んでいった。

 サンジェルマンが玉石を動かすと、ブロンズの扉が現れた。手で触れると、扉は開いた。彼らがそこから階段を降りていくと、エレベーターがあった。エレベーターは速度を増しながら下降した。到着したところにはもうひとつのブロンズの扉があった。「われわれは二千フィート(600m)降下し、山の中心部に着いたところだ」扉を開けながらサンジェルマンは言った。

 彼らはレセプション・ルームに入った。壁にはタペストリーが掛かっていた。それに描かれているのは<宇宙的存在>の夫婦だった。サンジェルマンによると、彼らは地下レトリートの創建者だった。

 彼はバラードを会議場に案内した。そこにはビロードのイスがたくさんあり、前方のスクリーンのほうを向いていた。部屋にはやわらかい光があふれていて、磨かれた壁は光っていた。天井から下がっていたのは黄金の円盤だった。神聖なるエネルギーがこれらの円盤から発せられていることをバラードは学んだ。

 サンジェルマンは彼をリトリートの旅に案内した。ライブラリーや宝庫を見て回った。それから会議室に戻ると、イスは埋まりはじめていた。アセンデッド・マスターたちも集まっていた。

 長衣をまとったマスターたちが集まってきたが、およそ七十人が着席した。バラードを含む通常の人間はごくわずかだった。話し声が会議室の中でこだましていたが、押し黙るようにという声が会衆に届いた。スクリーン上には丸い光が形成されはじめていた。

 光から、輝く長衣をまとった背の高い、威厳のある人物が歩み出した。波立つブロンドの髪が肩にかかっていた。みな準備ができているかと彼は会衆にたずね、しぐさでスクリーンを見るよううながした。

 「文明の行進」といったタイトルであろう内容のものがスクリーンに映し出された。ドラマティックで息をのむシーンの連続だった。つぎつぎと力強い国家が勃興しては滅亡していった。古代レムリアの栄光がスクリーン上に輝いたが、つぎには破滅があり、土地は太平洋の下に沈んでいった。飛行船がアトランティスの塔の上空を飛び回っていたが、こちらも海に飲み込まれてしまった。魚が塔のあいだを泳ぐさまが見られた。現在のゴビ砂漠にも強大な国家が殷盛を誇っていた。しかしそれも野蛮人の大量虐殺によって終止符を打つことになった。エジプト、ローマ帝国、現代のヨーロッパも順繰りに隆盛しては衰退していった。シーンはアメリカの勃興で終わっていた。

 スクリーンは暗くなった。そして光の輝きのなかでラントが現れた。大アセンデッド・マスターはバラードやその他のゲストを歓迎した。彼はゲストたちが<内なる神>をしっかりと受け入れるよう促した。そして金星人たちが訪問している間の大晦日に戻ってくるよう招いた。そしてラントはすべての人に祝福を与え、議会は延期された。

 サンジェルマンはバラードを音楽室へ案内し、自らハープを弾いた。彼らは地底のリトリートを楽しみ、シャスタ山に飛んで戻った。

 その後の何か月か、バラードはときおりサンジェルマンと会った。しかし大半はカリフォルニアの山々で黄金探索に明け暮れていた。

 しかし多くの時間を机の前で過ごしたのも事実である。自分の経験について彼は書きはじめていた。

 
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