地球内部への旅 25 

ロドニー・クラフ 

 

(1)

 遠征隊はロシアのムルマンスク港から出航しようとしていた。百人かそこらの乗客が原子力破氷船ヤマル号に乗っていた。乗船していた人々の大半がコストの割り当てとしてひとりあたり2万ドル払っていた。だれもがユニークな冒険を期待していた。しかしもっとも期待に胸を膨らませていたのは、北極地球内部遠征隊のオーガナイザー、ロドニー・クリフその人だった。

 退官した元政府官吏のクラフはアリゾナの自宅でこの野心的な冒険の計画を立てていた。地球内部への関心は長い間ずっと持ち続けてきた。若いとき、タブロイド紙に『地球空洞説』(レイモンド・バーナード博士)の広告が彼の目に留まった。彼は注文してその本を取り寄せ、読み、そして夢中になった。それからというもの、それをテーマにしたすべてのものを読み漁った。なかでももっとも興味深かったのは『霞たる神(スモーキー・ゴッド)』だった。クラフはオラフ・ヤンセンの航跡をたどって北極の穴の端まで行き、できればそれを越えたいと考えた。

 クラフは『世界のトップシークレット:地球は空洞だった』の著者である。この本は彼の長年に及ぶリサーチの成果だった。本はまず地球空洞説の、そして北極の穴の科学的証拠からはじまる。そして衛星写真、極地探検家の記録の解析、地震データの解釈、重力や電磁気学、オーロラ現象などの説明へとつづく。専門的な論点はなかなか理解しがたいが、この分野における彼の通暁ぶりには感服せざるをえない。

 北極の穴は隠された世界への入口であると彼は主張する。地球の内側には海もあれば、大陸もあるという。さらには、地球内部の気候はおだやかだが、それは中央の小さな太陽のおかげだという。証拠として彼は奇妙な事実を挙げる。北極地方の魚と鳥は北方へ渡ることが知られているが、それはより暖かい餌場があるからである。しかしシベリア北部で見つかるマンモスは氷の中で凍っているのではないのか。クラフはマンモスが何千年も前に絶滅しているという一般的な説明を拒絶している。彼の見解では、マンモスは最近まで生き延びていたという。彼らは地球内部の大陸をうろついていたのである。そしてたまたま残っていた群れがシベリアで最期を迎えたのである。

 

 


⇒ つぎ