チベット奇観 11 ラダック・スル渓谷
2000年代半ば、カルギルからザンスカルへ向う途中、ここスル渓谷のランドゥムに滞在しているとき、突然虹が出現した。わたしにはこれが天啓のように思えた。山肌の流れるよう地層と地表近くの虹が交差しているのには、何か意味があるような気がした。虹の脚の元の湿地帯にいる馬たちが幸せそうに見えた。
この二重山の麓の小さな丘の上に建つのがランドゥム・ゴンパである。ゲルク派に属する僧侶30人から40人ほどのチベット仏教の寺院だ。ここはつねにエネルギーが集まってくるような絶妙なポイントにある。
しかしじつはこの地域の住人のほとんどがムスリムだという。滞在していたズリドクという地域も、簡易な宿泊施設を経営する人々は、シーア派のムスリムだった。15世紀にペルシアの宣教師たちがやってきて、シーア派のイスラム教を広めたという。
スル渓谷のもっとカルギルに近いあたりにはモスクが建っていた。ダムスナ村のジャーマー・マスジドである。荒涼とした山に囲まれた孤高のモスクには悲壮な美しさがあった。
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