18 ヴェーダの天文学の神話

 ヴェーダ文学は興味深い神話をもっている。ヴェーダの暦は地球の軸の歳差運動によって変化する春秋分と夏冬至の位置によっている。「ヴェーダンガ・ジョーティシュ」によれば春分はアスレーシャ(Aslesha)すなわち蟹座から23度20分の星座(Nakshatra)に位置していたという。これは紀元前1400年であったことを示す。ブラーフマナやヤジュル・ヴェーダ、アタルヴァ・ヴェーダによれば、春分はクリッティカ(Krittika プレイアード、古くは牡牛座)にあり、夏至(ayana)はマガ(Magha 古くは獅子座)にあったという。これは紀元前2500年の時点を示す。春分や夏至に関する記述はおびただしく存在し、疑念をはさむ余地がない。つまりハラッパー文化の時代には高度な天文学がすでに発展していたのである。

 しかしこうした記述は西欧の学者に無視されるか、非科学的とみなされてきた。というのももしそれが正しいなら、ヴェーダの時間をはるか古代にもっていかなければならなかったからだ。ヴェーダに天文学の記述がないというわけではなかった。西欧の学者は考古学的証拠がないかぎりまともに取り扱おうとしなかった。しかしいままで見てきたように、ハラッパー・サラスヴァティー文明の考古学的証拠はつぎつぎと発見されているのだ。

 さらに付け加えるに、古代ギリシア文書に古代の天文学的記述が発見され、それは人類の叡智のひとつとして賞賛されてきたが、ヒンドゥーの文書のなかに発見されても、だれも評価しようとしなかった。むしろヒンドゥー文化は非科学的だとさえ言われたのだ。

 最近スバシュ・カクはリグ・ヴェーダ中に惑星周期を熟知していることを物語る天文学の記号を発見した。またある賛歌は22度北を示し、それはサラスヴァティー川がかつて海洋に流入した地点なのだった。



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