ユンドゥン・ボン 宮本神酒男

 ボン教はチベットの周縁地域ではまだまだ生き延びている。チベット自治区の中央部では、シガツェ近くのボン教の古刹ユンドゥン寺やメンリ寺がかろうじて残っているものの、他の寺院は消え、総本山はインド・ドランジの新メンリ寺に移っている。ドランジの数百人のボン僧の大半はアムド、とりわけ四川アバ州の出身だ。アムドのほかの地域やカム地方のボン教徒もけっして少なくない。カムではチベット自治区東部のキュンポ地方にたくさんのボン教寺院があり、この地域にはボン教徒も多い。またネパールではドルポ地方にボン教徒や寺院が集中している。
 これらすべてボン教と呼ばれるものはユンドゥン・ボンである。あえてそうでないボン教を探すとすれば、祭司をボンポと呼ぶナシ族やタマン族(ナシ族はBubu、タマン族はBombo)などの宗教であろうか。

 最近では欧米だけでなく、中国でも漢族のボン教徒が増加しているという。キュンポの若いボン教指導者は漢語を巧みに話し、多数の信者を獲得した。ボン教は実践的な、参加しやすい宗教に変貌しつつあるのだ。

 バルチスタンの少女

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