精霊とシャーマンの結婚式 〜じつはゲイ団結式?〜

昔むかし、火山が爆発し、そのイチモツがポーンと飛んで、山の中腹にぐさりと突き刺さった。それがミャンマーのポッパー山(右・写真)である。真偽はともかく、リンガのような形をした岩山は世界にもまれにみる霊場であり、不思議な力が漲っている。 
 そのポッパー山の麓の精霊宮殿で、精霊(ナッ)とシャーマン(ナッカドー)の厳粛なる結婚式が催された。人間同士の結婚式と違うのは当然だが、式の準備の段階からなにか異様な雰囲気が漂っていた。次第にあきらかになったのは、新婦だけでなく、参列する友人、というか、お仲間十数人全員があきらかにゲイなのだ。

 ナッカドーというタイプのシャーマンの過半数、おそらく八割はゲイである。毎年八月にマンダレー北郊で開かれるタウンビョン大祭には全国からナッカドーが集り、ゲイ・フェスティバルのような様相を呈してしまう。
 さて、だだっ広い精霊宮殿には絹の糸が四角く張られ、聖なる空間が作り出された。そのなかで年をとったゲイが介添え役になり、新婦の掌やくるぶしにピンクの紐を巻きつけたり、鏡を見せて化粧をさせたりする。三十代のナッカドーは感極まって涙を流していた。多額の費用がかかるため、精霊との結婚式はなかなか挙げられないのだ。
 それにしても謎めいているのは、精霊(ナッ)がタウンビョン兄弟のような男神で、ナッカドーがゲイの場合。精霊はゲイ好きなのだろうか。精霊がポッパー・メドーのような女神の場合、ナッカドーは夫ということになる。知り合いのナッカドー(ゲイ)は母と子のようなもの、と表現していたが、これだって母子相姦の汚名を免れ得ないだろう。
 まあ、ともかく、これで晴れて夢の中などで精霊とナッカドーは同衾することが許されるのである。


→ 「タウンビョン精霊祭につどうシャーマンたち
→ 「37の精霊(ナッ)